カルシウム(Ca)の化学的性質
基本情報
- 元素記号: Ca
- 原子番号: 20
- 電子配置: [Ar]4s²
- 酸化数: +2(カルシウムイオン Ca²⁺)
- 常温での状態: 銀白色の柔らかい金属
- 特徴: 典型元素(2族、アルカリ土類金属)、イオン化傾向が非常に大きい、反応性が高い
カルシウムの製法
1. 融解塩電解法
塩化カルシウムを融解して電気分解する方法。
2. アルミニウム還元法
酸化カルシウムをアルミニウムで還元する方法。
カルシウムの化学反応
1. 酸素・空気との反応
- 常温の空気中: 表面が酸化されて変色
- 加熱した場合: (5) 2Ca + O₂ → 2CaO (酸化カルシウム、白色)
- 高温で激しく燃焼(赤橙色の炎)
2. 水との反応
カルシウムは水と反応して水素を発生する。
- 冷水: (6) Ca + 2H₂O → Ca(OH)₂ + H₂↑
- ※ マグネシウムより激しく反応するが、ナトリウムほど激しくない
3. 酸との反応
カルシウムはイオン化傾向が大きいため、酸と激しく反応する。
- 希硫酸: (7) Ca + H₂SO₄ → CaSO₄ + H₂↑
- 希塩酸: (8) Ca + 2HCl → CaCl₂ + H₂↑
- 希硝酸: (9) 4Ca + 10HNO₃(希) → 4Ca(NO₃)₂ + NH₄NO₃ + 3H₂O
4. ハロゲンとの反応
- 塩素との反応: (10) Ca + Cl₂ → CaCl₂ (塩化カルシウム、白色)
5. 窒素との反応
- 高温で窒素と反応: (11) 3Ca + N₂ → Ca₃N₂ (窒化カルシウム)
6. 水素との反応
- 高温で水素と反応: (12) Ca + H₂ → CaH₂ (水素化カルシウム)
7. 炎色反応
- 色: 橙赤色(非常に特徴的)
- カルシウムイオンの検出に利用
カルシウムの化合物
1. カルシウムイオン Ca²⁺ の性質
- 色: 水溶液は無色
- 酸化数: +2 のみ
- 硬水の原因: Ca²⁺やMg²⁺を多く含む水は硬水
2. 酸化カルシウム CaO の性質(生石灰)
- 色: 白色
- 塩基性酸化物: 水と反応して強塩基を生じる
水との反応
- 消化(吸熱反応ではなく発熱): (13) CaO + H₂O → Ca(OH)₂
- ※ 強い発熱反応
酸との反応
- 塩酸: (14) CaO + 2HCl → CaCl₂ + H₂O
乾燥剤としての使用
- 水と反応するため、強力な乾燥剤として使用
- アンモニアなどの塩基性気体の乾燥に適する
3. 水酸化カルシウム Ca(OH)₂ の性質(消石灰)
- 色: 白色粉末
- 溶解性: 水に少し溶ける
- 水溶液: 石灰水(強塩基性)
二酸化炭素との反応
- 石灰水に二酸化炭素を通じる: (15) Ca(OH)₂ + CO₂ → CaCO₃↓ + H₂O
- (白濁)
- さらに二酸化炭素を通じる: (16) CaCO₃ + H₂O + CO₂ → Ca(HCO₃)₂
- (炭酸水素カルシウム、水に可溶、白濁が消える)
加熱による分解
- (17) Ca(OH)₂ → CaO + H₂O
用途
- 建築材料(漆喰、モルタル)
- 土壌改良剤(酸性土壌の中和)
- 二酸化炭素の検出試薬
4. 炭酸カルシウム CaCO₃ の性質
カルシウムの最も重要な化合物。
- 色: 白色
- 溶解性: 水に難溶
- 天然鉱物: 石灰石、大理石、方解石、貝殻、サンゴ、卵の殻
加熱による分解
- 強熱(約900℃): (18) CaCO₃ → CaO + CO₂
酸との反応
- 塩酸: (19) CaCO₃ + 2HCl → CaCl₂ + H₂O + CO₂↑
- 酢酸: (20) CaCO₃ + 2CH₃COOH → Ca(CH₃COO)₂ + H₂O + CO₂↑
二酸化炭素を含む水との反応
- 鍾乳洞の形成: (21) CaCO₃ + H₂O + CO₂ ⇌ Ca(HCO₃)₂
- 可逆反応であり、CO₂が抜けると再びCaCO₃が析出(鍾乳石)
用途
- セメント・ガラスの原料
- 建築材料(大理石)
- 製鉄の融剤
- 肥料、土壌改良剤
- チョーク、炭酸カルシウム製剤(胃薬)
5. 塩化カルシウム CaCl₂ の性質
- 色: 白色
- 溶解性: 水に易溶(溶解時に発熱)
- 潮解性: 空気中で潮解(水分を吸収)
用途
- 乾燥剤(強力な吸湿性)
- 融雪剤・凍結防止剤(道路)
- 冷却剤(氷と混ぜて寒剤)
- 豆腐の凝固剤(にがり成分の一つ)
6. 硫酸カルシウム CaSO₄ の性質
- 色: 白色
- 溶解性: 水に難溶
- 天然鉱物: 石膏(CaSO₄·2H₂O)
石膏の性質と用途
- 加熱(約150℃): (22) CaSO₄·2H₂O → CaSO₄·½H₂O + 1.5H₂O
- (焼石膏)
- 焼石膏に水を加える: (23) CaSO₄·½H₂O + 1.5H₂O → CaSO₄·2H₂O
- (固まる、発熱)
用途: ギプス、彫刻材料、建築材料
7. 炭化カルシウム CaC₂ の性質(カーバイド)
- 生成: (24) CaO + 3C → CaC₂ + CO (電気炉で約2000℃)
- 水との反応: (25) CaC₂ + 2H₂O → Ca(OH)₂ + C₂H₂↑
- (アセチレンを発生)
用途: アセチレンの製造(かつてのカーバイドランプ)
8. 次亜塩素酸カルシウム Ca(ClO)₂ の性質(さらし粉)
- 生成: (26) 2Ca(OH)₂ + 2Cl₂ → Ca(ClO)₂ + CaCl₂ + 2H₂O
- または: (27) Ca(OH)₂ + Cl₂ → CaCl(ClO) + H₂O
性質:
- 白色粉末、塩素臭
- 酸化剤、漂白剤として働く
- 酸と反応して塩素を発生: (28) Ca(ClO)₂ + 2HCl → CaCl₂ + H₂O + Cl₂↑
- 二酸化炭素と反応: (29) Ca(ClO)₂ + CO₂ → CaCO₃ + Cl₂
用途: 漂白剤、殺菌剤、消毒剤
9. その他の主なカルシウム化合物
- 硝酸カルシウム Ca(NO₃)₂: 潮解性、肥料
- リン酸カルシウム Ca₃(PO₄)₂: 骨・歯の主成分、肥料原料
- フッ化カルシウム CaF₂: 蛍石、光学材料
カルシウムイオンの沈殿反応と検出
1. 炭酸塩の沈殿
- Ca²⁺ + 炭酸ナトリウム: (30) Ca²⁺ + CO₃²⁻ → CaCO₃↓ (白色沈殿)
- ※ 最も重要な沈殿反応
2. 硫酸塩の沈殿
- Ca²⁺ + 硫酸ナトリウム: (31) Ca²⁺ + SO₄²⁻ → CaSO₄↓ (白色沈殿)
- ※ 水に難溶だが、完全には不溶ではない
3. シュウ酸塩の沈殿
- Ca²⁺ + シュウ酸アンモニウム: (32) Ca²⁺ + C₂O₄²⁻ → CaC₂O₄↓ (シュウ酸カルシウム、白色沈殿)
- ※ カルシウムイオンの定量に利用
4. リン酸塩の沈殿
- Ca²⁺ + リン酸ナトリウム(塩基性): (33) 3Ca²⁺ + 2PO₄³⁻ → Ca₃(PO₄)₂↓ (白色沈殿)
5. 炎色反応による検出
- 色: 橙赤色
- カルシウムイオンの最も簡便な検出法
- ストロンチウム(深紅色)と区別が必要
6. カルシウムイオンの分離
硫化水素による系統分離では、カルシウムは第5属に分類される。
- 第5属: Ca²⁺, Ba²⁺, Sr²⁺ など(アルカリ土類金属)
- 炭酸アンモニウムで炭酸塩として沈殿
その他の重要事項
イオン化傾向
K > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Cr > Fe > Ni > Sn > Pb > (H₂) > Cu > Hg > Ag > Pt > Au
- カルシウムはイオン化傾向が非常に大きい(カリウムの次)
- 常温の水と反応して水素を発生
- 強い還元剤として働く
アルカリ土類金属
カルシウムは2族元素(アルカリ土類金属)に属する。
- Be, Mg, Ca, Sr, Ba, Ra
- +2の酸化数を取る
- 反応性は下に行くほど大きい(Ca < Sr < Ba)
- 硫酸塩・炭酸塩は水に難溶
硬水と軟水
Ca²⁺やMg²⁺を多く含む水を硬水という。
- 一時硬水: Ca(HCO₃)₂、Mg(HCO₃)₂を含む(煮沸で軟化)
- 煮沸: (34) Ca(HCO₃)₂ → CaCO₃↓ + H₂O + CO₂↑
- 永久硬水: CaSO₄、MgSO₄を含む(煮沸では軟化しない)
- 軟水化: 炭酸ナトリウムやイオン交換樹脂で軟化
セメント
カルシウムの重要な用途
- 原料: 石灰石(CaCO₃) + 粘土(SiO₂、Al₂O₃)
- 製造: 約1500℃で焼成 → クリンカー → 粉砕
- 主成分: ケイ酸カルシウム、アルミン酸カルシウム
- 硬化: 水と反応して固化(水和反応)
生体内でのカルシウム
- 骨・歯: リン酸カルシウムCa₃(PO₄)₂が主成分
- 血液凝固: Ca²⁺が必要
- 筋肉収縮: Ca²⁺が関与
- 神経伝達: Ca²⁺が重要な役割
- 人体に最も多く含まれる金属元素(約1kg)
鍾乳洞の形成
- ①地下水にCO₂が溶解: (35) CaCO₃ + H₂O + CO₂ → Ca(HCO₃)₂
- ②地下空洞でCO₂が抜ける: (36) Ca(HCO₃)₂ → CaCO₃↓ + H₂O + CO₂
- 長い年月をかけて鍾乳石・石筍が成長
カルシウムの用途
- 建築材料: セメント、石灰、石膏、大理石
- 製鉄: 融剤(不純物の除去)
- 化学工業: 炭化カルシウム(アセチレン製造)
- 農業: 肥料、土壌改良剤
- 食品: 凝固剤、栄養補助
- 脱酸剤: 金属精錬
カルシウムの鉱石
- 石灰石: CaCO₃(最も重要)
- 大理石: CaCO₃(変成岩)
- 石膏: CaSO₄·2H₂O
- 蛍石: CaF₂
- リン灰石: Ca₃(PO₄)₂
注意すべき反応
- 石灰水と二酸化炭素: 白濁 → さらにCO₂で透明(可逆)
- 生石灰と水: 強い発熱反応(消化)
- 炭酸カルシウムの熱分解: 約900℃で分解
- 硬水: Ca²⁺、Mg²⁺を含む、一時硬水は煮沸で軟化
- 炎色反応: 橙赤色(検出に利用)
石灰の種類
- 生石灰(きせっかい): CaO(酸化カルシウム)
- 消石灰(しょうせっかい): Ca(OH)₂(水酸化カルシウム)
- 石灰石: CaCO₃(炭酸カルシウム)
- 石灰水: Ca(OH)₂の水溶液
- 石灰乳: Ca(OH)₂の懸濁液