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鉄(Fe)の化学的性質

基本情報

  • 元素記号: Fe
  • 原子番号: 26
  • 電子配置: [Ar]3d⁶4s²
  • 酸化数: +2(鉄(II)イオン Fe²⁺), +3(鉄(III)イオン Fe³⁺)
  • 常温での状態: 銀白色の金属
  • 特徴: 遷移元素、強磁性体、展性・延性に富む

鉄の製法

1. 高炉法(溶鉱炉法)

鉄鉱石(主に酸化鉄)をコークスと石灰石とともに高炉に入れ、還元して鉄を得る方法。

使用する原料

  • 鉄鉱石: 赤鉄鉱(Fe₂O₃)、磁鉄鉱(Fe₃O₄)など
  • コークス(C): 還元剤および燃料
  • 石灰石(CaCO₃): 融剤(不純物除去)

主な反応式

  • ① コークスの燃焼: (1) 2C + O₂ → 2CO
  • ② 一酸化炭素による還元: (2) 3CO + Fe₂O₃ → 2Fe + 3CO₂
  • ③ 炭素による直接還元: (3) 2C + Fe₂O₃ → 2Fe + 2CO₂
  • ④ 石灰石の分解: (4) CaCO₃ → CaO + CO₂
  • ⑤ 不純物(SiO₂)の除去: (5) CaO + SiO₂ → CaSiO₃ (スラグ)
  • 生成物: 銑鉄(炭素約4%含む)→ 製鋼により鋼(炭素0.02~2%)に

    鉄の化学反応

    1. 酸素との反応

    • 高温で酸素と反応: (6) 3Fe + 2O₂ → Fe₃O₄ (四酸化三鉄、黒色)
    • 常温で湿った空気中: 徐々に酸化されて赤褐色の錆(水酸化鉄(III))を生じる

    2. 水との反応

    • 高温の水蒸気と反応: (7) 3Fe + 4H₂O → Fe₃O₄ + 4H₂

    3. 酸との反応

    • 希硫酸・希塩酸: (8) Fe + H₂SO₄ → FeSO₄ + H₂↑
    •        : (9) Fe + 2HCl → FeCl₂ + H₂↑
    • 希硝酸(冷): (10) 3Fe + 8HNO₃(希) → 3Fe(NO₃)₂ + 2NO↑ + 4H₂O
    • 濃硝酸・濃硫酸(冷): 不動態を形成して反応しない

    4. 塩素との反応

    • 加熱した鉄と塩素: (11) 2Fe + 3Cl₂ → 2FeCl₃ (塩化鉄(III)、褐色)

    5. 硫黄との反応

    • 加熱した鉄と硫黄: (12) Fe + S → FeS (硫化鉄(II)、黒色)

    6. 金属イオンとの反応(イオン化傾向)

    Fe は Cu²⁺ よりイオン化傾向が大きいため、銅イオンを還元する。

    • 硫酸銅水溶液に鉄を浸す: (13) Fe + CuSO₄ → FeSO₄ + Cu

    鉄の化合物

    1. 鉄(II)イオン Fe²⁺ の性質

    • 色: 水溶液は淡緑色
    • 還元性: Fe²⁺ は酸化されて Fe³⁺ になりやすい

    Fe²⁺ の酸化反応

    • 空気中での酸化: (14) 4Fe²⁺ + O₂ + 4H⁺ → 4Fe³⁺ + 2H₂O
    • 硝酸との反応: (15) 3Fe²⁺ + 4H⁺ + NO₃⁻ → 3Fe³⁺ + NO↑ + 2H₂O
    • 過マンガン酸カリウムによる酸化(硫酸酸性): (16) MnO₄⁻ + 5Fe²⁺ + 8H⁺ → Mn²⁺ + 5Fe³⁺ + 4H₂O

    2. 鉄(III)イオン Fe³⁺ の性質

    • 色: 水溶液は黄褐色
    • 酸化性: Fe³⁺ は還元されて Fe²⁺ になることがある

    Fe³⁺ の還元反応

    • ヨウ化カリウムとの反応: (17) 2Fe³⁺ + 2I⁻ → 2Fe²⁺ + I₂

    3. 主な鉄化合物

    • 硫酸鉄(II) FeSO₄: 淡緑色結晶、水溶液は淡緑色
    • 塩化鉄(II) FeCl₂: 淡緑色
    • 塩化鉄(III) FeCl₃: 褐色、水溶液は黄褐色
    • 硫酸鉄(III) Fe₂(SO₄)₃: 黄褐色
    • 酸化鉄(II) FeO: 黒色
    • 酸化鉄(III) Fe₂O₃: 赤褐色(赤鉄鉱、ベンガラ)
    • 四酸化三鉄 Fe₃O₄: 黒色(磁鉄鉱)、FeO·Fe₂O₃ とも書ける

    鉄イオンの沈殿反応

    1. 水酸化物の沈殿

    • Fe²⁺ + 水酸化ナトリウム: (18) Fe²⁺ + 2OH⁻ → Fe(OH)₂↓ (水酸化鉄(II)、白色→空気中で緑色→赤褐色)
    • Fe³⁺ + 水酸化ナトリウム: (19) Fe³⁺ + 3OH⁻ → Fe(OH)₃↓ (水酸化鉄(III)、赤褐色)
    • 水酸化鉄(II)の空気酸化: (20) 4Fe(OH)₂ + O₂ + 2H₂O → 4Fe(OH)₃

    2. 硫化物の沈殿

    • Fe²⁺ + 硫化水素(塩基性): (21) Fe²⁺ + S²⁻ → FeS↓ (硫化鉄(II)、黒色)
    • ※ Fe³⁺ は硫化水素で還元される: (22) 2Fe³⁺ + H₂S → 2Fe²⁺ + S↓ + 2H⁺

    3. ヘキサシアニド鉄酸塩による呈色反応

    鉄イオンの検出に用いられる重要な反応

    Fe²⁺ の検出

    • ヘキサシアニド鉄(III)酸カリウム K₃[Fe(CN)₆] を加える:
    • (23) 3Fe²⁺ + 2[Fe(CN)₆]³⁻ → Fe₃[Fe(CN)₆]₂↓ (濃青色沈殿、ターンブル青)

    Fe³⁺ の検出

    • ヘキサシアニド鉄(II)酸カリウム K₄[Fe(CN)₆] を加える:
    • (24) 4Fe³⁺ + 3[Fe(CN)₆]⁴⁻ → Fe₄[Fe(CN)₆]₃↓ (濃青色沈殿、プルシアンブルーまたは紺青)

    チオシアン酸イオンによる検出

    • Fe³⁺ + チオシアン酸カリウム KSCN: (25) Fe³⁺ + SCN⁻ → [Fe(SCN)]²⁺ (血赤色の錯イオン)

    その他の重要事項

    イオン化傾向

    K > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Fe > Ni > Sn > Pb > (H₂) > Cu > Hg > Ag > Pt > Au

    • 鉄は水素よりイオン化傾向が大きいため、希酸と反応して水素を発生
    • 濃硝酸や濃硫酸(冷)では不動態を形成

    鉄の錆(腐食)

    鉄は湿った空気中で酸化され、赤褐色の錆を生じる。錆の主成分は水酸化鉄(III) Fe(OH)₃ や酸化鉄(III) Fe₂O₃·nH₂O。

    • 防錆法: めっき(亜鉛めっき=トタン、スズめっき=ブリキ)、塗装、合金化(ステンレス鋼など)

    合金

    • 鋼: Fe + C(0.02~2%)
    • ステンレス鋼: Fe + Cr + Ni(耐食性)
    • フェロクロム: Fe + Cr