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亜鉛(Zn)の化学的性質

基本情報

  • 元素記号: Zn
  • 原子番号: 30
  • 電子配置: [Ar]3d¹⁰4s²
  • 酸化数: +2(亜鉛イオン Zn²⁺)のみ
  • 常温での状態: 青白色の金属
  • 特徴: 遷移元素、両性元素(酸・塩基両方と反応)、常温では脆いが100~150℃で展性・延性を示す

亜鉛の製法

1. 乾式製錬法

亜鉛鉱石(主に硫化亜鉛 ZnS)を焙焼して酸化亜鉛とし、コークスで還元して亜鉛を得る方法。

反応の流れ

  • ① 硫化亜鉛の焙焼(空気中で加熱): (1) 2ZnS + 3O₂ → 2ZnO + 2SO₂
  • ② 酸化亜鉛の還元: (2) ZnO + C → Zn + CO
  • 注意: 亜鉛の沸点は907℃と比較的低いため、高温で還元すると亜鉛蒸気が発生し、これを冷却して金属亜鉛を得る。

    2. 湿式製錬法(電解法)

    酸化亜鉛を硫酸に溶かし、硫酸亜鉛水溶液を電気分解して亜鉛を得る方法。

  • ① 酸化亜鉛を硫酸に溶解: (3) ZnO + H₂SO₄ → ZnSO₄ + H₂O
  • ② 硫酸亜鉛水溶液の電気分解:
  •  陰極: (4) Zn²⁺ + 2e⁻ → Zn
  •  陽極: (5) 2H₂O → O₂ + 4H⁺ + 4e⁻
  • 亜鉛の化学反応

    1. 酸素・空気との反応

    • 常温の乾燥空気中: 表面に緻密な酸化皮膜(ZnO)を形成し、内部を保護
    • 加熱した亜鉛と酸素: (6) 2Zn + O₂ → 2ZnO (酸化亜鉛、白色)

    2. 水との反応

    • 常温の水: ほとんど反応しない(酸化皮膜により保護)
    • 高温の水蒸気: (7) Zn + H₂O → ZnO + H₂↑

    3. 酸との反応(両性元素の性質)

    亜鉛は両性元素なので、酸とも塩基とも反応する。

    希硫酸・希塩酸との反応

    • 希硫酸: (8) Zn + H₂SO₄ → ZnSO₄ + H₂↑
    • 希塩酸: (9) Zn + 2HCl → ZnCl₂ + H₂↑

    硝酸との反応

    • 希硝酸: (10) 4Zn + 10HNO₃(希) → 4Zn(NO₃)₂ + NH₄NO₃ + 3H₂O
    • または: (11) 3Zn + 8HNO₃(希) → 3Zn(NO₃)₂ + 2NO↑ + 4H₂O
    • 濃硝酸: (12) Zn + 4HNO₃(濃) → Zn(NO₃)₂ + 2NO₂↑ + 2H₂O

    4. 塩基との反応(両性元素の性質)

    亜鉛は両性元素なので、強塩基とも反応して水素を発生する。

    • 水酸化ナトリウム水溶液: (13) Zn + 2NaOH + 2H₂O → Na₂[Zn(OH)₄] + H₂↑
    •            (テトラヒドロキソ亜鉛(II)酸ナトリウム)
    • イオン反応式: (14) Zn + 2OH⁻ + 2H₂O → [Zn(OH)₄]²⁻ + H₂↑

    5. ハロゲンとの反応

    • 塩素との反応: (15) Zn + Cl₂ → ZnCl₂ (塩化亜鉛、白色)

    6. 硫黄との反応

    • 加熱した亜鉛と硫黄: (16) Zn + S → ZnS (硫化亜鉛、白色)

    7. 金属イオンとの反応(イオン化傾向)

    Zn は Cu²⁺ よりイオン化傾向が大きいため、銅イオンを還元する。

    • 硫酸銅水溶液に亜鉛を浸す: (17) Zn + CuSO₄ → ZnSO₄ + Cu
    • イオン反応式: (18) Zn + Cu²⁺ → Zn²⁺ + Cu

    亜鉛の化合物

    1. 亜鉛イオン Zn²⁺ の性質

    • 色: 水溶液は無色
    • 酸化数: +2 のみ(d軌道が完全に満たされている)
    • 錯イオン形成: アンミン錯イオンやヒドロキソ錯イオンを形成

    2. 酸化亜鉛 ZnO の性質

    両性酸化物であり、酸にも塩基にも溶ける。

    • 酸との反応: (19) ZnO + 2HCl → ZnCl₂ + H₂O
    • 塩基との反応: (20) ZnO + 2NaOH + H₂O → Na₂[Zn(OH)₄]

    用途: 白色顔料(亜鉛華)、化粧品、医薬品

    3. 水酸化亜鉛 Zn(OH)₂ の性質

    両性水酸化物であり、酸にも塩基にも溶ける。

    • 生成: (21) Zn²⁺ + 2OH⁻ → Zn(OH)₂↓ (白色沈殿)
    • 酸との反応: (22) Zn(OH)₂ + 2HCl → ZnCl₂ + 2H₂O
    • 塩基との反応: (23) Zn(OH)₂ + 2NaOH → Na₂[Zn(OH)₄]
    • イオン反応式: (24) Zn(OH)₂ + 2OH⁻ → [Zn(OH)₄]²⁻

    4. アンミン錯イオンの形成

    • 少量のアンモニア水: (25) Zn²⁺ + 2NH₃ + 2H₂O → Zn(OH)₂↓ + 2NH₄⁺
    • 過剰のアンモニア水: (26) Zn(OH)₂ + 4NH₃ → [Zn(NH₃)₄]²⁺ + 2OH⁻
    •          (テトラアンミン亜鉛(II)イオン、無色)

    5. 主な亜鉛化合物

    • 硫酸亜鉛 ZnSO₄: 無色結晶、水溶液は無色
    • 塩化亜鉛 ZnCl₂: 白色、潮解性あり
    • 硫化亜鉛 ZnS: 白色、蛍光物質(硫化亜鉛に微量の銅や銀を加えると蛍光を発する)
    • 炭酸亜鉛 ZnCO₃: 白色、菱亜鉛鉱

    亜鉛イオンの沈殿反応と検出

    1. 水酸化物の沈殿(両性)

    • Zn²⁺ + 水酸化ナトリウム(少量): (27) Zn²⁺ + 2OH⁻ → Zn(OH)₂↓ (白色沈殿)
    • 過剰の水酸化ナトリウム: (28) Zn(OH)₂ + 2OH⁻ → [Zn(OH)₄]²⁻ (沈殿が溶解)

    2. 硫化物の沈殿

    • Zn²⁺ + 硫化水素(塩基性): (29) Zn²⁺ + S²⁻ → ZnS↓ (白色沈殿)
    • ※ 硫化亜鉛は酸性では沈殿しにくい
    • 酸性での溶解: (30) ZnS + 2H⁺ → Zn²⁺ + H₂S↑

    3. 炭酸塩の沈殿

    • Zn²⁺ + 炭酸ナトリウム: (31) Zn²⁺ + CO₃²⁻ → ZnCO₃↓ (白色沈殿)

    4. ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウムによる検出

    • Zn²⁺ + K₄[Fe(CN)₆]: (32) 2Zn²⁺ + K₄[Fe(CN)₆] → Zn₂[Fe(CN)₆]↓ + 4K⁺
    •           (白色沈殿)

    5. 亜鉛イオンの分離

    硫化水素による系統分離では、亜鉛は塩基性で沈殿する第4属に分類される。

    • 第4属: Zn²⁺, Mn²⁺, Fe²⁺, Co²⁺, Ni²⁺ など
    • 塩基性(NH₄Cl + NH₃水溶液)で H₂S を通じると ZnS として沈殿

    その他の重要事項

    イオン化傾向

    K > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Fe > Ni > Sn > Pb > (H₂) > Cu > Hg > Ag > Pt > Au

    • 亜鉛は水素よりイオン化傾向が大きいため、希酸と反応して水素を発生
    • 亜鉛は鉄より活性が大きいため、鉄の防食に利用される(トタン)

    両性元素としての亜鉛

    亜鉛は両性元素であり、酸とも強塩基とも反応する。

    • 酸との反応: Zn²⁺ を生成
    • 塩基との反応: [Zn(OH)₄]²⁻ を生成
    • ※ 同様に両性を示す元素: Al, Sn, Pb など

    亜鉛の用途

    • めっき: トタン(鉄板に亜鉛めっき)、防食作用
    • 合金: 真鍮(黄銅、Cu + Zn)、洋銀(Cu + Zn + Ni)
    • 乾電池: マンガン乾電池の負極
    • 酸化亜鉛: 白色顔料(亜鉛華)、化粧品、ゴムの加硫促進剤
    • 硫化亜鉛: 蛍光物質、夜光塗料

    ボルタ電池

    亜鉛は乾電池や電気化学の実験でよく使われる。

    • 負極(Zn): (33) Zn → Zn²⁺ + 2e⁻ (酸化)
    • 正極(Cu): (34) 2H⁺ + 2e⁻ → H₂↑ (還元)

    トタンとブリキの比較

    • トタン(亜鉛めっき): 傷がついても亜鉛が先に酸化されるため、鉄を保護(犠牲陽極)
    • ブリキ(スズめっき): 傷がつくと鉄が先に酸化される