第9章 幕藩体制の成立と展開
④経済の発展
農業生産の進展
≪新田開発≫鉱山開発の技術が転用され、大規模な治水・灌漑工事が進む
:17世紀初頭から18世紀初頭までに耕地は約2倍に(164→297万町歩)
- (1. 箱根)用水(1670):箱根芦ノ湖の水を利用。名主と江戸の豪商が協力
- (2. 見沼代)用水(1728):武蔵国の見沼新田開発のために利根川から引く
- 有明海、備前児島湾、下総(3. 椿海):下総。江戸町人の請負、幕府の支援により1673完成
≪開発の類型≫
- (4. 町人請負)新田:豪商が開発を請け負う 鴻池新田(河内、18世紀初頭)、越後(5. 紫雲寺潟)新田、摂津川口新田など
- 代官見立新田:享保期に奨励される
- 村請新田:1村ないし複数村で開発
≪農具の改良≫
- 風呂鍬→(6. 備中鍬):中期〜、深耕用
- こき箸→(7. 千歯扱)(別名「後家倒し」):脱穀具
- (8. 殻(唐)竿):麦や豆類などの脱穀
- (9. 千石簁):穀粒の選別農具
- (10. 唐箕):中期〜、風で籾殻などを飛ばす選別農具
- 竜骨車・なげつるべ→(11. 踏車)
商品作物の生産
各地で「(12. 四木三草」(桑・漆・茶・楮/麻・藍・紅花)などの栽培が盛んに
→栽培方法を教示する「農書」が広く読まれ、栽培に必要な「金肥」が大量に使用される
≪農書≫ *農村に広く普及
- 金 『清良記』:新しい栽培技術などを紹介
- 『(13. 農業全書』:(14. 宮崎安貞)が明の徐光啓『農政全書』に学び著した最初の体系的農書(1697)、ベストセラーに
- 銀 武蔵川崎宿の名主である(15. 田中丘隅)が8代将軍吉宗に取り立てられ、意見書『民間省要』を提出
- 銅 『農具便利論』・『(16. 広益国産考』:諸国を巡り見聞を深めた(17. 大蔵永常)が著す
≪金肥(金銭で購入する肥料)の使用≫ *商品作物の栽培に不可欠、蝦夷地などで生産
- (18. 干鰯):鰯・鯨の日干しで、畿内では綿作に加え稲作でも使用
- (19. 〆粕):鰯・鯨やゴマなどから油を絞った粕で、商品作物の栽培に利用
- (20. 油粕):菜種油・綿実油の絞り粕で、家畜の飼料・農作物の肥料
- *これまで一般的な肥料であった刈敷は、新田開発が進んだため不足し、都市周辺部では下肥が利用される
≪主な特産物≫
- (21. 紅花):出羽
- 茶:宇治、駿河
- 藺草:(22. 備後)
- 藍:(23. 阿波)
- 砂糖:(24. 薩摩)、讃岐
- 高級紙(25. 奉書)紙:鳥の子紙、播磨杉原紙、讃岐檀紙 *日用紙も多く生産される(美濃紙)。楮を主な原料とし流漉の技術で生産される
- たばこ:薩摩、肥後
- 葡萄:(26. 甲斐)
- 蜜柑:(27. 紀伊)
- 木綿:(28. 三河)、河内、尾張、久留米絣、小倉織 *簡単な地機で生産
- 麻織物:越前縮・近江麻・奈良晒
- 絹:足利絹(栃木)、桐生絹(群馬)、西陣織(高度な技術の高機という織り機を当初独占)、丹後縮緬、上田紬(長野)、黄八丈(伊豆八丈島)、結城紬(茨城)
- 漆:会津
林業
- 藩が直轄する山林から伐り出された(29. 木曽)檜や(30. 秋田)杉などが商品化される
- 江戸中期には陸奥・出羽・蝦夷地にまで材木問屋が進出
- 薪・炭は都市近郊で生産され、大量に販売される
漁業
- 上方(瀬戸内・熊野地方中心)では多様な網漁が発達:(31. 地曳)網・船曳網・定置網など
- 各地に上方漁法が広まり、多様に発展
- 鰯漁:房総(32. 九十九里浜)の地曳網・伊予の船曳網など、干鰯に加工
- 捕鯨:紀伊・土佐・長門・肥前など
- (33. 鰹漁):土佐、鰹節に加工
- 鮭漁:肥前五島
- 鰊・昆布漁:松前、鰊は金肥用。また中国への輸出品として昆布や(34. 俵物:干し鮑・いりこ・ふかひれなど)の生産盛んに
製塩業
- 高度な土木技術が用いられた(35. 入浜)塩田が瀬戸内などで発達
陶磁器
- (36. 伊万里)焼:肥前有田、伊万里港から出荷、長崎貿易の主要な輸出品となる
- 九谷焼:加賀、伊万里より学ぶ
- 京焼:楽焼以外の京都産の総称(清水焼など)
- *瀬戸や多治見では、藩の保護によって安価な陶磁器が大量に生産される
醸造業
- 酒:(37. 伏見)・灘・伊丹など 樽を使用することにより、高級酒として江戸へ(下り酒)
- 醤油:(38. 野田・銚子)などで大量に生産
鉱山業 *17世紀後半に金銀の産出量は激減し、代わって銅の産出量が増加
- 金 佐渡相川金山(新潟)・伊豆金山(静岡)・甲斐金山(山梨)
- 銀 但馬生野銀山(兵庫)・石見大森銀山(島根)・院内銀山(秋田)
- 銅 (39. 足尾)銅山(栃木)・(40. 別子)銅山(愛媛)・阿仁銅山(秋田) *銅は17世紀後半以降、長崎貿易における最大の輸出品に
製鉄
- (41. たたら精錬):砂鉄を採集し中国地方などで盛んに これにより製造された玉鋼が全国に普及
- *鉄鉱石による製鉄は、釜石鉄山の鉄鉱石を使用した1857年以降のこと
交通の整備と発達
≪街道≫ 江戸の日本橋を起点とする幹線道路が整備される
- (42. 東海道):江戸・京都間で品川〜大津の53宿
- (43. 中山道):江戸・草津間で板橋〜守山の67宿
- 甲州道中・日光道中・奥州道中を合わせて(44. 五街道)と呼び、幕府の(45. 道中)奉行が管理
- それ以外に(46. 脇)街道が全国で整備される
- :伊勢街道・(47. 北国)街道(江戸-佐渡)・中国街道(=山陽道)・長崎街道(小倉-長崎)等
- 街道には、(48. 宿駅)が2〜3里ごとに置かれ、宿場町として繁栄
- :(49. 問屋場)で宿役人が諸業務(伝馬役の管理・継飛脚など)を行う
- 大名などの利用する(50. 本陣・脇本陣)や、庶民の利用する(51. 旅籠屋)も整備
- *幕府や大名などの御用通行は、周辺の百姓らの負担する(52. 伝馬)役によって支えられる 伝馬役を補うために人や馬を徴発される村もあり、その負担を助郷役とよぶ
他に以下の施設・制度も整備される
- (53. 一里)塚:幕府が江戸(54. 日本橋)を起点に約4km毎に塚を築く
- 関所:幕府が約50ヵ所設置 (55. 箱根)関(「入鉄砲に出女」を厳しく取り締まる)・(56. 新居)関(浜名湖)・碓氷関(上野国)・木曽福島関など
- 飛脚:手紙・金銀など小貨物を運ぶ
- (57. 継飛脚):幕府公用の飛脚、1590年の家康関東入府より設置(東海道、約68時間)
- (58. 大名飛脚):大名が江戸と国元間に置く
- (59. 町飛脚):1663年に三都間の飛脚業が開始、飛脚問屋による民営
≪水運≫ 遠隔地を結ぶ重要な交通であり、鉄道が開通するまで機能
- 淀川水運:京都・伏見と大坂を結ぶ、朝鮮通信使も利用
- (60. 保津川)水運:丹波・京都間の輸送水路、1606年に豪商の(61. 角倉了以)が開削 *角倉了以は他に高瀬川や富士川なども開削
- 全国規模の会場交通網は、17世紀後半に豪商(62. 河村瑞賢)が整備
- (63. 東廻り)海運:東北地方の日本海沿岸と江戸を津軽海峡経由で結ぶ
- (64. 西廻り)海運:蝦夷地の松前から下関経由で大坂まで結ぶ
- (65. 北前船)が東北や蝦夷地の物資を大坂まで輸送
- 江戸-大坂間は(66. 南海)路とよばれ、(67. 菱垣)廻船や(68. 樽)廻船が就航 当初大型の菱垣廻船が主流、後に船足の速い樽廻船が安価に輸送し中心となる
貨幣と金融
≪貨幣鋳造≫
- 1600 (69. 慶長金銀)〜慶長大判・小判、慶長(70. 丁銀)・(71. 豆板銀)を大量に鋳造
- (72. 金)座:当初江戸と京都におかれ(73. 後藤庄三郎)が小判などの(74. 計数)貨幣を鋳造、金貨は4進法(1両=4分、1分=4朱)
- (75. 銀)座:当初伏見と駿府→江戸におかれ、丁銀などの(76. 秤量)貨幣を鋳造 *重さや品質を吟味して価値を決める
- 1636〜 (77. 銭)座が江戸と近江坂本などにおかれ、(78. 寛永通宝)を大量に鋳造
- ようやく17世紀半ばに(79. 三貨:金銀銅貨の総称)が全国に普及
- しかし、幕末まで東日本では(80. 金)遣い、西日本では(81. 銀)遣いであり、貨幣制度は統一されず(1871〈明治4〉新貨条例で統一)
- *17世紀後半〜各藩内のみで通用する(82. 藩札)も発行される
- 商人が手数料をとって両替を行い(両替商)、なかでも有力な商人は幕府や藩の公金管理、貸付などの銀行業務を行い(83. 本両替)とよばれる
- :三井家(三井高利)、天王寺屋、平野屋、鴻池、三谷、鹿島屋など
三都の発展 *世界でも有数の大都市に成長
≪江戸≫18世紀に人口100万人、「将軍のお膝元」といわれる
- 主要な卸売市場:日本橋の(84. 魚)市、神田の(85. 青物)市
≪大坂≫大坂城代により幕府が直轄、人口40万人、「天下の台所」といわれる
- 中之島には、諸藩の倉庫兼取引所である(86. 蔵屋敷)が並ぶ
- 蔵屋敷では商人(87. 蔵元・掛屋)が年貢米などの(88. 蔵物)を販売し貨幣を大名へ
- 民間商人が各地から買い集めた(89. 納屋物)の取引も大坂で行われる
- 主要な卸売市場:(90. 堂島)米市場、(91. 雑喉場)魚市、(92. 天満)青物市
≪京都≫京都所司代により幕府が直轄、人口40万人
- 高級手工業(西陣織、京染、京焼など)が発達し、三井家など大商人の本拠地となる
商業の展開
≪(初期)豪商≫
- 権力と結び朱印船貿易などで巨大な富、流通が未発達な17世紀前半に全国的な物流を担い莫大な富を形成
- :(93. 角倉了以)(京都)、茶屋四郎次郎(京都)、(94. 末吉孫左衛門)(摂津平野)、今井宗薫(堺)
- 初期豪商は鎖国と全国的流通網の確立で急速に衰え、元禄期に大商人が登場
- :鴻池家、三井家(越後屋)、住友家、紀伊国屋文左衛門など
≪株仲間の形成≫
- 17世紀後半〜 (95. 問屋)や仲買が同業者団体である(96. 仲間)を形成
- 独自の法である(97. 仲間掟)を定め、営業独占を図る
- *問屋:中世の問・問丸の発展したもの。倉庫業を兼ねる。
- 生産者⇔問屋⇔(98. 仲買)⇔(99. 小売)商人:(100. 振売)など、零細な商人も多い
- 代表的株仲間 江戸:(101. 十)組問屋、大坂:(102. 二十四)組問屋
- 江戸・大坂間の荷物運送の安全、海損の共同保障、流通の独占をめざし、複数の問屋仲間が連合組織を形成